硬い音にならないで!とか、きれいな音で流れよく!とか、もっと力を抜いてね!とか、・・
「いったいどうすればいいの??」と悩んでしまいませんか?
「脱力とは」上手な演奏には欠かせない、永遠の課題かも知れません。
難しい問題のようですが、このようなお悩みを解決する方法があります!
今回は、「重力移動と腕の動かし方」という視点で見ていきたいと思います。
脱力の考え方
脱力とは、力を抜いてフニャフニャにするのではありません。
無駄な力を抜く、ということも合ってますが、厳密にはそこの前段階の考え方だと思っています。
以前にも「らくに弾く① らくに弾く②」で書きましたが、今回はもう少し違った視点で書きます。
脱力とはどういうことなのか・・
ちなみに、脱力するといい音が出ます。
でもよく言う「響く音」はここで言う脱力だけでは出ません。
「響きのある音」はこちらに書きました。
では、「響く音」はどうするかというと、脱力を使って、次にする作業キータッチのやり方と、その次に来る離鍵のお話になってきます。
と言うことは「いい音を出すには脱力が必須で、その「力を抜く」という何とも抽象的な漠然としたものに悩むのではないでしょうか。
今回、この「脱力する」というイメージをわかりやすい例えでお伝えしようと思います。
脱力は感じることから始まる
「脱力」の感覚を身体や頭でイメージ出来ることが大切
アドバイスレッスンをしていて、よく聞く言葉があります。
「脱力出来てるかどうかがわかりません」「合ってるかどうか見て頂きたいです」
確かに、本当に自分で出来ているのか…これでいいのか…が、わかりにくいですよね。
<筆者見解>
まず「脱力」のイメージ(力が抜けている状態)を自分でイメージ出来ることが大切かと思います。
日常生活でも、「字を書いてると肩が凝る」「本を読んでいると肩と首が凝り目がかすむ」そんな状況に出会っていませんか?
こんな疲れや痛みを感じるとき、どんな身体の使い方をしてるでしょうか?
- 肩が上がっていたり
- 頭が傾いていたり
- 同じ姿勢をしていたり
そうなんです。全て、重力に逆らった力でそれをキープしようとし、しかもその状態で動かずに固まってる状態です。
無理な姿勢を保とうと筋肉に力を入れてると、血流も悪くなり痺れたりかすんだり…になるわけです。
こんな日常生活の癖を知り、楽なポジションはどういう感じかを知ることはとても重要です。
これが「脱力の原点」になります。
ピアノ演奏は、もっと高度な動きで、特殊な作業をしています。
まず日常の自然で楽な感覚を身体と頭で理解すると、ピアノ演奏に繋げていけると思います。
脱力の解決法
ピアノの脱力は歩くときの身体の使い方と同じ
脱力のの解決法として、まずどんなイメージを持つとわかりやすいか…ということです。
今までも、いろいろ説明したり例え話をしました。
こちらでは、最近みなさんに反応が良かった2点を書いてみます。
地面に対してまっすぐ立つ。
この姿勢が一番負荷がかからず自然に地球に重みを流している状況です。いわゆる「楽である」状態になります。
・頭が少し傾くだけで
・片方の足に体重を預けるだけで
・肩を片方上げるだけで
重心が傾くのが想像できると思います。
そうなるとその悪い姿勢を保とうと筋肉がこわばります。
左写真の自然な立位の状態から、歩く動作を考えてみましょう。
<歩くとき>
右足を出して、左を出して、また右足を出す。と命令して歩いてる人はいるでしょうか?
・頭、胸、腰の重みを前に移動すると「歩こう」という意思がなくても、赤丸足が前に出るはずです。
・この時前に動く身体のバランスを取るために手や腕、太股が誘導する動きをします。
1.重心の移動
上の写真が、人の自然な動きで、無理のない自然な動きとは、重心の移動であることがわかって頂けると思います。
「歩く動作の時」この体重移動をせず、腰に重さを残したまま足を前に出して歩くと考えると、かなり疲れそうです。
いらないところの筋肉も使って、身体のエネールギー消耗もありそうです。
この自然な動きが無駄な力を使わず楽であると言うことが、ピアノ演奏で言う「脱力」という言葉になっています。
ただ、ピアノを弾くこと自体、「自然な動き」とは思えないし、まして「ピアノを弾く時に構える腕の位置」も、腕を支えてキープしなければいけないので、決して「らくな姿勢」ではないのです。
でも、脱力して各部位をふんだんに使って響きのある良い音で演奏したいのです。
では、どのように考えれば良いかを書いてみます。
「ピアノ演奏で重心を移動させる」を考えてみる
例えば写真左手②人差し指でファの音→③ミ→④レ→⑤ド
と弾く時②→③の動きを、<歩く時>に置き換えます。
②を弾いてる手の甲や腕の位置を1㍉~数㍉③へ、重心移動を感じて動かします。
その時、腕や肘で押し出し(数㍉のごくわずか)、指先の動きを誘導する感じです。
そして、丁寧なタッチで準備している指先が鍵盤を沈めていきます。
そのような一連の動きを続けて行きます。
決して指先をバタバタ動かすのではなく、歩く時のように「思わず次の足が自然と出てきた」という感覚です。
以前にも書いた、ピアノを弾くとは、指を動かすのではない!という話がわかりますでしょうか?
腕を行きたい方向に動かす。その前に肘がその方向に誘導する。
指先も腕も肘も、重心移動という意味で連動しているわけです。
これが、「ピアノを弾く」という動作になります。
2.重みを移し続ける
ピアノを弾くのは、弾くために腕を支える力がいります。
なので「脱力」してるのではないということです。
重力に逆らって肘を90度近く曲げて弾く準備をするわけですが、すでにこの時点で負荷がかかってます。
決して「脱力した楽なポジション」ではないのです。
なので、90度以上の角度がある方が、腕への吊り上げるというエネールギーを少しでも減らせます。
このように負荷がかかってるからこそ、肩甲骨→肩周り→上腕→肘→腕→手首→指先へと重みを移すのです。
そして、弾いてる音の瞬間や伸ばしてる音の間は、重さを止めません。重さを動かし続けます。
このように、脱力していない腕を、重さを動かし続けることで負荷を逃がし、力を抜く作業をしていることになります。
その重さを、鍵盤に流すことで「楽な状態、すなわち脱力出来ていること」になります。
座る姿勢がまずの基本
↓に、身体の重心がまとまっています。
ここがしっかりとしていると、腕や脇や自由に動かすことが出来、足の支えによって身体の重心の可動域が広がります。
頭の重さは一般的に4~6㌔、体重の10%と言われています。
首・肩・背中の筋肉がこの重みを支えていて、首が傾くほど負担がかかります。
写真の姿勢だと身体の重心が背中や傾いた腰になります。
アルペジオや長いスケールなども同じ考え方
オクターブの基本練習である、スケール&アルペジオも、この重みを移し続けることできれいな音のまとまりが作れます。
この練習の時に、わかりやすく伝わりやすい説明ができました。
<教室レッスンで>
指先だけで鍵盤を捉え、上滑りな響きの薄い音を出してる生徒がいました。
「指先に重みを移す」ことを都度説明しますが、本人自身これだ!という閃きになかなか出会えませんでした。
ある日、大縄飛びの縄を回す動作を一緒にしました。
徐々に腕を回すときの、目に見えない位の微妙な身体の重心移動をしていることを確認してもらいました。
「それと同じだよ」
そんな言葉一つで、ピンとくるものがあり、なめらかかつしっかりと響きを捉えられる重さで、どの指も均一にキャッチすることが出来ました。
脱力の解決 まとめ
ピアノを弾くには脱力が必要!!と言っても、腕の力を抜いたり、手首を硬くしないでブラブラにするのではありません。
もちろん身体の各部位に、無駄な力を入れて固めてしまってはいけませんが、それよりも身体の使い方・動かし方になります。
重みを動かし、その動きを止めずに、重心を自由自在に動かすことによって弾くことになります。
そして、そのように身体の軸(重心)を知ることで、楽になれるポジションを知れると言うことです。
ピアノ演奏は、激しく情熱を持って弾く時もたくさんあります。いろんな意味で負荷をかけることもあります。
でも、必ずナチュラルな自然なポイントに戻しながら、たえず演奏に変化を付けていきます。
力が抜けてるばかりが良いわけではなく、でも自由奔放な響きは解放された力を使わなければいけません。
要するに、ピアノを弾くとは、数限りない工夫を織りなして作っていくものなのです。
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ピアノを弾いていて・・悩んでいたことが、ちょっとしたきっかけで「こういうことか!」と腑に落ちることがたくさんあります。
きっと、いろいろやってみることから、その出会いは始まると思います。
諦めず、何事もトライ精神で、でもいろんな角度から視点を変えることが大事かも知れません。
たくさんの発見に出会えますように…頑張りましょう!
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