和音を弾くとき、特に三和音以上やオクターブなど、たくさんの音を掴んだり、広い音域で手を広げて演奏するときに「手首が痛い」「手が疲れる」などの困ったことに遭遇しませんか?
和音の弾き方のコツとして
- 手の形
- 手の開き方
- 手首の角度
- 鍵盤へのポジション
- 手首・前腕・肘の使い方
などで、解消できることがたくさんあります。
一つずつ、見ていきましょう。
和音を弾く時の手の形
手の形は、こちらでも紹介してるように力を抜いた脱力の丸さが大切になります。
例えば「顔を洗う丸い手」「大きなボールを包み込むような丸い手」
決して指を丸くとか、猫ちゃんのような指先をひっかく形ではなく、自然な丸みが必要です。
手の甲より、手の平の丸みが重要になってきます。
和音を弾く時の手の開き方
和音の音に指を合わせる。
この考え方は、手を硬直させたりガチッと固めてしまったり、窮屈な手の形になりかねません。
当然、ドミソやドファラ、シファソやソレファ…の場所に指先を配置するのですが、届きにくければ届きにくいほど、弾きにくければ弾きにくいほど、肩を上げたり手首をひねったり固めたり、指に力を入れたりしてませんか?
音に指を合わせる前に、手の開き方が大切になります。
手の骨の構造を見てみましょう。
指の付け根は、手根骨と呼ばれるところからになります。
いわゆる「指を動かす」という考え方の時、手の中にある付け根から動かすことを意識しましょう。
今回の和音を弾く時の手の開き方は、赤の領域を広げる感じになります。手の中のことなので意識を持つことが大切です。指先を広げると言うことではないのです。
オクターブの手の広げ方も、緑の領域を外へ広げる感覚で、まず親指から「親指⇔人差し指」の赤の領域を可能な限り広げます。そして各指の赤○の部分を広げます。
<図1>手の骨の構造
手が大きいとか、オクターブが届くとかは、「開く手」この赤の領域がどれだけ広げられるかに関わってきます。
自然に開いた手
左>手の平(手根骨から指と指の間)を思いっきり開いた感じの手 右>手の平の中心に指と指の感覚を開いて包み込む感じ
和音を弾く時の手首の角度
複雑な和音や、自分の体の前、もしくは右手なら体を超えて低いポジション、左手なら体を超えて高いポジションの時、手首が痛かったり弾き辛かったりしませんか?
また、右手和音の高音を出す場合(音量バランス)や、和音を連続で弾く場合、オクターブの連続など、力が入ってしまい手首も痛いし上手く弾けないことに出会うのではないでしょうか。
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<例>当教室で小学4年の生徒と大人の方が、同時期同じ悩みに遭遇しました。
- 右手メロディーの高音を出すとき(小4)
- オクターブの連続(ドミドの和音)が届かない、はまらない(大人の方)
とにかく二人とも、手が突っ張ってます。「さー来た!」という感じでしょうか。
体を越えるポジションだと、まず肩も上がってしまいます。
この様に、力が入った時点で和音はスムーズに弾けません。
下の写真のように、「手首が痛い」とは、手首の親指側ではなく、小指側がほとんどではないでしょうか?
まれに手首の下側と言う方もいらっしゃいますが…
写真のように青の➡のように屈折してませんか?
これで一生懸命弾くと、痛いだろうな。。と想像できるのではないでしょうか。
この手首の角度を、赤の線のように腕からの直線上に指先の方向を持って行きます。
感覚として、腕から一本の棒のように手首から先も一直線になるように、鍵盤上に構えてみてください。
すると、肘が自然に開きますよね。
そして、鍵盤へのポジションが横一列ではなくなります。
親指側が手前になったり、小指側が手前になったり、音型や高低によってポジションが違ってくるはずです。
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- 右手メロディーの高音を出すとき(小4)
<高音を出す>
これは、打鍵の深さや指のタッチを変えるため(指先一点を使ったり面でタッチしたり)手首が屈折してると、コントロールが難しく手首にかなり負担があるようで、泣きながら放棄した彼も一転、上機嫌でやり方(手首の角度)が解った!と手応えを感じました。
- オクターブの連続(ドミドの和音)が届かない、はまらない(大人の方)
<届かない、はまらない>
「届かない」これはまず、開き方からのトレーニングになりました。
すぐに小指を広げて弾こうとすると、手の中が広がらないまま無理をして指を伸ばすことになります。
<図1>で示したように、まず○親指と人差し指の間を広げることをします。この時、他2.3.4.5の指は開きません。
机でもピアノの蓋でも良いので、親指が動かないように片方の手で押さえ、広げる方の手は力まず楽に広げるトレーニングをします。
○の部分を外へ広げる意識も訓練しました。これも力まず、指先も広げません。
このトレーニングを子どもたちには、バーナムテクニックのテキストで徹底練習をします。
「はまらない」これは、手首の移動や肘の誘導が必須になります。これは後で書きます。
ドミド(右手)の連続は、ドミの和音を取り出して横に移動する練習を徹底します。
この時、2の指の方を移動させる動きの軸として意識します。
親指は力を解放して、2の指との距離感(幅だけ)をキープするイメージです。
この時の小指は、親指との距離感さえわかれば動かすこと自体の意識はしません。
勝手に付いてくる!・・そんな感じです。
とにかく、「はまらない問題」は手首の角度と鍵盤へのポジションと、あとは力みのない手首・腕・肘の使い方になります。
鍵盤へのポジションは、次に書きます。
和音を弾く時の鍵盤のポジション
5本の指を、鍵盤と同じようにまっすぐ構えたくなりますが、隣の音で構成される音階ですら動きに伴って手向きは変わります。
たとえ白鍵ばかりの音型でも、横一列に指跡が付くわけではありません。
まして黒鍵も混ざってくる音型は、奥行きを感じて運指しなければいけません。
下の写真<1>と<2>のポジションの違いはわかりますでしょうか?
<1>は、中央ドとラの6度の和音。ポジションが中央のため肘が詰まります。
少し脇を開くことによって、手首の角度が自然になってるのが想像できますか?
そして、腕から1本の棒だと感じ指をセットすると、親指が手前、小指が奥に配置されます。
他の指も、自然なアーチでセットすると、指の長さのままのポジションになります。
<2>は、中央ドを挟みラシドレファの5音の和音。<1>と同じ6度の和音です。
中央が3の指になるので、<1>よりも手首の角度が屈折しないはずですが、やはり、1本棒のようにするために親指を手前にセットします。
そして、2.3.4.5.も弾かなければいけないため、黒鍵に挟まれた狭い白鍵を弾くことになります。
2.3.4.5.の弱い指をしっかり打鍵するために、少し手首が高くなってることがわかりますでしょうか?
手全体を立ち上げる感じです。親指以外の指は、奥に侵入する感じです。
そして、重みをかけやすいように、指先も締めて掴む形になります。
掴む…となると、力んだり手を固くして弾きたくなりますが、フォームとしてカッチリ決めたら、あとは腕の重みと肘の前への振り出す力を使います。
いわゆる打鍵速度なのですが、力の移動と鍵盤を捉えるタイミングがポイントとなります。
和音を弾く時の手首・前腕・肘の使い方
和音を弾く時にかかわらず、手首・前腕・肘の使い方が、ピアノを弾くこと全てに大切になります。
- 細かい指の動き
- いろんな音色を奏でるとき
- 様々な奏法を操るとき
挙げればきり無く、「手首・前腕・肘の使い方」は全てにつながります。
今回の和音を弾く時に肝心なものは、
・手首の脱力であり角度であり
・前腕で音コントロールをし
・肘の使い方で瞬発力や移動のしなやかさや立体感の誘導であったり
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上記での「はまらない」は、手首の移動や肘の誘導になります。
<隣の音に移動するとき>
脱力した手首を、指がまだ前の音に残ある状態の時に、手首位置を隣の鍵盤まで誘導してから指を移します。
<跳躍する移動のとき>
肘を飛びたい位置にスライドさせて手指を誘導します。決して先に指先を鍵盤に合わせません。そうした時、肘や腕に力が入ってるはずです。力が入り自然な動きを止めると、ミスタッチの原因になります。
飛びたい距離を、自分の体からどれくらいなのかを体で覚えていきます。
鍵盤を見て跳躍するのではないと思いましょう。
肘の使い方については、こちらにも書きました。
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やはり、ピアノは一つの事だけをすれば上手く行くというような、簡単なものではなさそうです。
でも、いろんな事をトライすることで、その一つずつが繋がっていく面白さがあります。
とにかく、いろんな問題点に出会ったとき、いろんな方法で試してみること。
やってみて初めて「出来る」に出会えること。
これだけは、確かなようです。
いろんなことに遭遇しても、面白さを忘れず発見できる喜びに変えられますように♡
頑張りましょう!!
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少しでもみな様の悩みを解決出来るなら…といつも思っています。