スラーの部分を、美しくなめらかに弾けたらまとまりのある音になり、綺麗なフレーズを作れますね。
楽譜に出てくる音楽記号のスラー。どのように弾けば良いの?と思うことがありませんか?
楽譜には、演奏に大切な約束の記号がたくさん書かれています。
スラーもその記号の一つで、スラーは演奏を表現豊かにするためには欠かせない大切な記号です。
もっとレガートで、スラーを意識したらフレーズの印象がガラッと変わりますよ。
・・と、よく言われたり聞いたりしませんか?
「レガート」や「フレーズ」のお話は、また別記事に書きます。
今回は、美しくなめらかに弾くために、スラーの弾き方を説明していきます。
スラーって何?
スラーとは:高さの違う2つ以上の音を結ぶ記号
スラーの意味は2つあります
- なめらかに音と音を切れないようにレガートでつなげて弾くこと
- 音のまとまりを示しフレーズの区切りを表してるということ
やはり、何だか難しい「レガート」や「フレーズ」という言葉が出てきます。
スラーがかかっていれば、①の音が切れないように弾けばいい・・だけではなさそうです。
②のフレーズの区切りとは、どういうことでしょう。
音楽はたくさんの音の連なりで出来ていて、スラーで一つのまとまりを区切っています。
文章を読むときに、句読点「、」や「。」で区切ることで、読みやすくなるし聞きやすくなり、棒読みではなく抑揚を付けることで、より情感が伝わります。
音楽も同じで、スラーで区切られた一つのフレーズがあり、次にまた新しいフレーズが始まる。
音楽は、フレーズとしていくつかのまとまりを作って作曲されています。
このようにフレーズのまとまりを大きく捉え、まとまりとして演奏するためには、抑揚をつけたり技術的な工夫を盛り込みます。
抑揚をつけたり技術的な工夫とは、スタッカートやアクセントや強弱など、いわゆるアーティキュレーションを工夫し音楽の方向性など、様々な要素が含まれます。
と、音楽記号の「レガート」や「フレーズ」は、やはり深い話になりそうなので別記事に詳しく書くとして、今回はスラーの弾き方と美しくなめらかに弾くコツに焦点を当ててみます。
音楽記号のスラーってどう弾くの?
音が切れないように弾く
「スラーで繋がっているところは音をつなげる」
「スラーが切れているところは音を切る」
確かにそうなのですが、そんなに簡単な話ではなさそうです。
ではスラーって、どうやって弾けばいいのでしょう。
「スラーがひとつのまとまり」と聴いてる人にわかるように弾く。
「音のまとまりに意味と表現」を取り込むような演奏をする。
これが、スラーを弾く時の大切なことであり、音楽を表現する一番のポイントになりそうです。
2音のスラー
まず、2音のスラー
この基本の弾き方を説明します。
音楽的にどのように弾けば良いのかは、後でご紹介します。
2音のスラーの弾き方
- 指の動かし方
- 鍵盤の上げ方
- 重みの移し方
- 手・手首・腕・肘の使い方
この辺りかな、と思います。
1.指の動かし方
・ファ➡ソと弾く時、ファの指はソの音を弾いた時に同時に上げず、ゆっくりと受け渡しをする感じです⬅スローモーション
・指先をバタつかせず、指から指の動きをなめらかにします⬅フィンガーレガート
<例えば>リレーのバトンを渡すとき、相手の手に丁寧にタッチし丁寧に渡し手を離します。無造作に手渡しをしませんし、きっちり受け取れたことを確認したら優しく手放す。
指先の動きも、次への動きも、美しく丁寧に配慮することです。
2.鍵盤の上げ方
・①のゆっくり指を動かすと言うことは、ゆっくり鍵盤を戻していくと言うことになります。
<例えば>指先に糊がが付いていて、鍵盤がくっいてるかのように鍵盤を戻すと、鍵盤自体の戻ろうとする抵抗を感じ取ることが出来ます。鍵盤の戻ろうとする力を感じコントロールすると、離鍵のテクニックも劇的に種類が増えます。
音色や音の処理は、打鍵とこの離鍵で作ります。
3.重みの移し方
・指から指へ、重みを移していくイメージです。
<例えば>荷物があって、手の中にある透明のパイプの中をスムーズに流していくイメージです。
バタバタ動かしては、荷崩れするしパイプの中で衝突を起こして、なめらかな動きになりません。
音の粒がそろわないのも、この重みにバラツキがあるためで、一つの同じ荷物を流して行くのだから弱い指であろうが短い指であろうが同じでなくてはいけないのです。
指を動かして作ろうとするのではなく、同じ重みを移すと考えることが大切です。
4.手・手首・腕・肘の使い方
・①②③で指をどのように使うか、鍵盤をどのように扱うかがわかれば、スラーの弾き方としては第一段階をクリア出来ます。
・手・手首・腕・肘の使い方が「音のまとまりを示しフレーズの区切りを表しているということ」に繋がります。
音楽記号のスラーを美しくなめらかに弾くコツ
例えば、このような音型にスラーがつくと、なめらかに美しく弾きたいですね。
その時に、手・手首・腕・肘の使い方が決め手となります。
スラーの形:これってよく考えてるな、と思ってます。直線ではなく、弧を描く曲線であること。
しかもこのように上行形の音は、スーっと上に吊り上げられる感じがしませんか?
そしていつも思うのが、お習字と良く似てる。
ドの音の筆入りをスーっと入ると同時に少し瞬間止めが入り、動きを伴って筆圧が掛かり、最後に筆を抜いていく。
いかがでしょうか?楽譜と、音のイメージや手の動きは一致しますか?
・筆入り⬅脱力した手(手の平・手の甲や手首)を腕から下へ沈める(決して重みをかけ過ぎず、スーっとです)
・瞬間止め⬅はじめの音は大切です。曖昧にならないように指先の処理がおろそかにならないこと
・筆圧⬅音の方向性を伴って、重みを浅く~深く~浅くと抑揚をつける
この時の音の方向性を手首や腕や肘で誘導する⬅これがスラーを美しくなめらかに弾く絶対の重要なポイントです
・筆を抜いて⬅脱力させた手を、手首から抜いていく(この時の離鍵の速度で表現が変わる)
音楽的にどのように弾けば良いのか
「音楽的に」と、言う意味には様々な要素があります。
一言で言ってしまえば、「作曲者が伝えたいこと、自分が伝えたいことを伝えたい人に届けられる」と、なるでしょう。
そのためには、フレーズを考えていく必要があります。
スラーという小さな区切りから、もっと大きく広く音楽を捉えることになります。
小さな一まとまりのフレーズから、大きなフレーズを感じ、様々なテクニックで音楽を作るには「息づかい」も大切ですし、「感情の抑揚」も大事になります。
スラーのように楽譜に表記されてるものばかりではなく、「フレーズ」という記載のないものを読み取り、感じることが大切になってきます。
まず、「スラーのやり方」「美しくなめらかに弾ける」ことが出来たら、次の段階の音楽を大きく捉え、音楽を感じることが大切となる。・・となる前に「フレーズを見つけることが出来る」が必要になりますね。
楽譜上に書いてあることを習得するだけでも、とても難しく時間が掛かるピアノです。
書かれていないものまで読み取るとなるには、奥が深く「どうだろう?」と考えることが大事なことかも知れません。
でも、この「音楽的にどのように弾けばいいのか」がわかってくると、音楽を追究することが楽しくなります。
簡単なことではないかも知れませんが、だからこそ、深い感動に触れることも出来るはずです。
この「フレーズ」や「フレージング」や「息づかい」や…
難しそうなお話に聞こえますが、是非この世界を垣間見て欲しいと思っています。
次回
「レガート」や「フレーズ」
「フレージング」や「息づかい」
「アーティキュレーションのいろいろ」
など、お伝えしようと思います。
音楽は、一つのことだけで出来てるのではなく、さまざまなテクニックや要点が複雑に絡み合います。
何度も何度も思い返せるように、他の記事も参考にしてみて下さい。