スタッカート 基本のやり方からさまざまな表現法

 

スタッカートにはさまざまな種類があり、それに伴いいろんなテクニックがあります。

 

指先・手・手首・肘・腕など、各部位をどのように使うと良いのか、

ピアノを響かせる打鍵のやり方で自由自在に音を操ろう!にもスタッカートの弾き方を書きました。

「スタッカートの基本は:打鍵スピードで変わり響きや音色も変化出来る」ことを5つのポイントで書きましたが、

 

 

 

今回は少し違う視点から考えていきます。

 

 

 

スタッカートとは

 

スタッカートとは、イタリア語で「切り離された」の意味で音楽記号の一つ。

音楽におけるアーティキュレーションの一つで、スタッカートは本来の音価よりも短く演奏する。

軽快で活発な印象を与える表現方法として、さまざまな楽曲で用いられます。

 

スタッカートの弾き方として、「みじかく切る・はねる」「ジャンプする」などの言葉でイメージされますが、そのままのイメージで弾くと、かなりの誤解を生じると思います。

 

一見シンプルな奏法に見えて、奥深い技術が必要となります。

 

たとえキレッキレの短いスタッカートにしたいときも、しなやかな弾みのあるスタッカートの場合も、基本の考え方は変わりありません。

 

 

では、どういうことなのかを次の4つに分けて書きます。

  1. 基本的なスタッカート
  2. いろんな表情のスタッカート
  3. スタッカートのメロディー
  4. スタッカートの連打

まず、その前に「スタッカート」の勘違いしやすい点を書きます。

 

 

 

スタッカートの誤解

 

まず、「短く切りたいから」「はねたいから」といって、鍵盤をたたく感じになってませんか?⬅指先のタッチング

 

「元気よくジャンプしたいから」「勢いのある音にしたいから」と力を入れて、弾く時も弾いた後も、腕を鍵盤から垂直に動かしていませんか?⬅指先が下を向かず手の平が鍵盤と平行な形

  • 軽やかなスタッカートも
  • 重みのあるスタッカートも

 

どのようなスタッカートでも、鍵盤へのタッチは「パンッ」とたたくのではありません。

 

どのような場合も、ピアノを弾くときは、鍵盤に瞬間指をセットして鳴らします。

スラーもスタッカートも、大きい音もやさしい音も、跳躍音も連打も、全てです。

 

瞬間のセットの速度や、触った鍵盤から手を離す速度で、あらゆる音楽表現や音色を作っていきます。

 

では4つの種類をそれぞれ解説します。

 

 

1.基本的なスタッカートの弾き方

 

まずの基本として、「スタッカートの練習の前に普通の音の鳴らし方」をチェックします。

 

<例>何指で、何の音でもかまいません。一音だけ鍵盤を下ろして上げる。いわゆる単純に弾いてみて下さい。

  • 指先へ、上腕➡肘➡手首➡手を通って重みを流せてますか?
  • 弾いた指先を止めずに、肘で前に押しだし➡手首を解放して➡指先の一点に重みを集めていけてますか?

いわゆる各部位の脱力と、動きを止めないことが重要なポイントでした。

 

これが、まずのスタッカートを弾く基本になります。

 

この普通に弾くタッチ出来てから、スタッカートの練習に移行していきます。

 

 

<スタッカートの基本練習法>

どうするかというと

<例>ゆっくり自然な打鍵が出来てから➡指先を止めずに、まずゆっくり指を抜いていきます。

  • 普通に鳴らしてから➡まず指抜きの速度をゆっくりからだんだん速めていきます。

<注意点>この時、①指先は下向き(鍵盤側に向いてること)②手に力が入ってしまわない(手首から脱力して抜く)

 

 

ピアノを弾くと言うことは、いつ、どんな時も、丁寧な打鍵と耳で聴き取りながらの離鍵が全てです。

 

 

どのようなイメージでスタッカートを弾きたいかで、各部位の使い方が変わります。

 

指抜きの速度をゆっくりからだんだん速めて、短くなおかつ素速く離していくこと➡これがスタッカートの作り方です。

 

 

2.いろんな表情のスタッカートの弾き方

 

スタッカートには、軽快で歯切れの良い音色で表現するものもあれば、しなやかな弾みもありますし、メロディーとして歌うものもあります。

 

さまざまなスタッカートを、ブルグミュラーの曲から解説していきます。

 

 

ブルグミュラー<アラベスク>の冒頭部分でスタッカートの弾き方の解説画像

ブルグミュラー<アラベスク>の冒頭部分。

 

左手が三和音で、スタッカートがついています。そして指示にleggiero(軽く)があり、pでとあります。

 

<左手和音スタッカートの練習法>

➡まず、三つの音に指をきっちりセットします。

鍵盤から離さず、531の指が均等に沈められるか、練習します。そして、4回同じタッチで沈められるか試します。

この時、沈める練習なのでスタッカートはつけません。まずきっちり打鍵できるかが大事になります。

 

➡バラツキ無く沈める感じをつかめたら、次に少し速く鍵盤を沈めます。

この時、腕や手に力を入れてエイッとたたくのではなく、手首のスナップや肘から先の腕を少し振り下ろす感じです。

この手首か腕の下ろす速さと指先の支えのタイミングは重要ですが、ポンッと落とす感じです。

この時も、鍵盤から指先は離しません。

 

➡速度を感じて打鍵できるようになったら、ポンッと落とした手を手首から抜き上げて、鍵盤から指先を離します。

この時、まだスタッカートらしい音が出なくても大丈夫です。鍵盤から指先を離すことで「音を分離する」というイメージをつかみます。

 

➡「アラベスク」の小さな音で軽やかに弾む音のために、手首のスナップや肘から先の腕を下ろすスピードを増やしていきます。

この時、速く打鍵!と思って頑張るのではなく、鍵盤を突く感じです。蹴りだす感じで鍵盤から手(指)を抜いていきます。

 

<注意点>

・手を上から落として弾いたり、そのまま手を上げてはねない⬅指先が鍵盤を触ってる状態でスタッカート(弾み)を付ける

・スタッカートを弾いた後、指先は下を向いてることが大切

・手首のスナップを使うとは、手首を上下に動かすことではありません⬅鍵盤を突くスピードでの手首の脱力

 

 

ブルグミュラー<牧歌>の冒頭部分で同音連打の弾き方解説画像

 

ブルグミュラー<牧歌>の冒頭部分。

 

3小節目からの左伴奏部分。スタッカートの表示はありません。

 

でも、この部分の弾き方がいろいろ様々あるように思います。

先ほどのアラベスク同様、沈める練習をするとdolceでcantabileな音が出せます。

この時も、手首から上に持ち上げ下ろします。

<筆者見解>打鍵が深いままだと前に進まない曲になるので、手首スナップを効かせて少し鍵盤から指を離します。

 

<注意点>

手首を持ち上げても、指の3点(531)の接着にバラツキの無いようにします

 

3.スタッカートのメロディーの弾き方

 

一曲には、さまざまなスタッカートが出てきます。

メロディーとして、横に歌いたい時や拍を感じたい時など、いろんなニュアンスのために弾き方が違ってきます。

 

 

ブルグミュラー<シティリアの女>の冒頭部分でスタッカートの弾き方解説画像

 

ブルグミュラー<シティリアの女>の冒頭部分。

 

<赤色部分>

メロディーとしてスラーは記されていませんが、一つずつトツトツと切るのではなく横へつながる感じが欲しいです。

 

<スタッカートのメロディー練習法>

➡まず、「スタッカートの練習の前に普通の音の鳴らし方」つまり、スラーで練習します。

 

<スラーの練習>

  • 指先へ、上腕➡肘➡手首➡手を通って重みを流す
  • 弾いた指先を止めずに、肘で前に押しだし➡手首を解放して➡指先の一点に重みを集める
  • 音から音へ、同じ重みを移す

いわゆる各部位の脱力と、動きを止めないことが重要なポイントでした。

 

重みを移し、手の甲や手首で自然に横への誘導が出来たら、指先を鍵盤から抜いていきます。

まだ、スタッカートのイメージまでいかなくて大丈夫です。

いわゆる、音につながりがあり、その一音ずつが分離されてる感じをつかみます。

 

メロディーとして流れや方向性の感覚がつかめたら、指先の一点を引き締めて軽くタッチします。

 

<注意点>

「切る」と考えると途端に手のどこかに力が入ってしまわないように、スラーのイメージメロディーを歌うことを優先します

 

<黄色部分>

拍の頭になるスタッカートなので、弾みよく伸びやかに弾くため、腕の重みを利用し肘から前へ押し出すスピードでコントロールします。

短いタッチングになりますが、次の青色部分を考えると、指残り(鍵盤に触れてる時間)を少し増やします。

それと同時に、手首の抜き方もゆっくり目になります。

 

<青色部分>

弱拍のスタッカートは、指に芯(鉛筆の芯のように)を作り、軽くタッチします。

手首は、スナップだけ効かします。

 

 

4.スタッカートの連打の弾き方

 

同音連打もあれば、跳躍スタッカートもあります。

どちらの場合も、重みの移動がポイントになります。

 

 

ブルグミュラー<おしゃべり>の冒頭部分でスタッカートの弾き方の解説画像

 

ブルグミュラー<おしゃべり>の冒頭部分。

 

<青色⇨の部分>は、跳躍でのスタッカート。

まず、手を上げ下げするような鍵盤の捉え方をすると、音が散らばりミスタッチの原因になります。

手の方向と距離感がポイントとなります。

 

<跳躍スタッカートの練習法>

まず、手を開きすぎず、手の甲を1オクターブずつ移動させて距離感をつかみます。

5→1➡2と移動させる時、

5→は横にスライドする感じ

1➡2は1の親指に手の甲が被さり、若干手の平が外を向く感じにします。

 

<注意点>

弱拍の5,1指は軽く、水面を駆けていくイメージで重みを下に感じないように5,1は2の音に向かって行く。

5→1➡2を、一つのフレーズとして感じますが、2の音も重みを下にかけ過ぎて停滞しないように次のフレーズにつなぐ

 

<赤色部分>

同じ音の連打ではあるけれど横へのメロディーとして捉える。

一音ずつわずかに重みを移し、手の甲や手首で自然に横への誘導をします。

5(ラの音)へスライドして、次の一拍目の緑○で手首を前に蹴りスナップを使って弾みをつけます。

 

<注意点>

打鍵は浅く、重みではなく指先を軽く裁く感じにしましょう

 

<黄色部分>

一拍目の躍動感のあるスタッカートで、上へのイメージです。

 

<注意点>

手首のスナップを使って指先下向きに。指先は鍵盤から離れない位の感じで、打鍵を速くする

 

<青色部分>

三拍目の軽やかなステップ感をイメージします。

 

<注意点>

青色部分は、次の一拍目に向かう方向性が大切で、三拍目から一拍目を誘導する感じ

 

 

スタッカートを弾くためのコツ

 

以下に「スタッカートを弾くためのコツ」を指先から腕までのポイントと注意点をまとめてみました。

 

 

脱力が基本

スタッカートを弾く際、手首や腕、肩に余計な力が入らないように注意しましょう。

脱力がうまくできていないと指先をコントロール出来ず、弾みの良い音が出せなくなります。

 

指先のコントロール

歯切れの良いスタッカートを弾くために、鍵盤の深さと速度をコントロールしましょう。

鍵盤を下げた後にはね上げすぎてはだめで、うまく鍵盤を蹴るような反動で指が跳ね返る感覚を持って弾くことが必要です。

 

指先(使い方によって音色も変化する)

 

  • 指先を立て、しっかりと鍵盤を捉える
  • 指先だけで弾くのではなく、手首のスナップや肘・腕も活用する
  • 鍵盤の捉え方で、クリアで明るい音色を出すことができる

 

指と手・手首・肘・前腕・上腕の連携

スタッカートは基本的に「投げの動作」です。指先が垂直の直線を描くように、上腕を使って指先を投げるように弾きます。

手首だけで弾くのではなく、指・手・肘・前腕・上腕をうまく連携させて行いましょう。

 

(形にこだわらずに力を抜くことが大事)

  • 手の甲より手の平の筋肉を使う

手首(指先を動かすために必要な柔軟性と音のキレを生み出す役割がある)

  • 手首を柔らかく、自由に動かせるようにする
  • 手首のスナップを使って、軽快な音色を出す
  • 手首を上下に動かしすぎないように注意する
  • 手首に力が入ると、音が硬くなり軽快な響きやキレを失う

(安定感と自然な動きが大切)

  • 肘の力を抜いて前後左右、自由に動きを誘導する
  • 肘の力が入ると、音が硬くなり軽快なスタッカートの響きを失う

(全体の動きと表現力に影響する)

  • 腕全体をリラックスさせ、力を入れすぎないようにする
  • 腕の重さを利用して、音に深みを持たせる
  • 腕の動きの速さで音色や音質を変える
  • 音に強弱や表現をダイナミックに作りたいとき

 

スタッカートの意味を理解する

スタッカートは「音を分離する」を意味し、ただただ跳ねるイメージではなく、音を切り離すイメージで弾くことを意識しすることはとても大切になります。

 

例え短い音にするスタッカートでも音をよく聴き音楽として次に繋がることが大切です。

 

無造作な、無味乾燥な音の配列にならないようにしましょう。

 

 

練習方法

 

最初は音は長めで、次の音との分離から始めます。

一音ずつの丁寧な確認が出来てから、少しずつ音を短くしていきましょう。

 

音がきちんと聴こえることが大切なので、スタッカートを強調するのではなく、音を切ってしっかりと聴かせることを意識しましょう。

 

  • 手首と指先だけで音を出す(打鍵の基本)
  • ゆっくりとしたテンポから練習を始め、徐々に打鍵速度を上げていく
  • メトロノームを使って、正確なリズムを意識する(拍を感じて指のタッチや肘・腕の処理が必要)
  • 音量のコントロールにも注意しながら、様々なタッチで音色変化を練習する
  • 様々な音符の長さのスタッカートを練習する
  • 音楽作品の中で、スタッカートを意識して演奏する
  • 鏡を見ながら、肘に力が入っていないか・自然な動きかをチェックする

 

まとめ

 

スタッカートは、指先・手・手首・肘・腕など、体の様々な部位を連携させながらの奏法で、奥深い表現技法です。

 

スタッカートを上手に弾くためには、指先コントロールから、手首・肘・腕それぞれの役割を理解し、適切な力加減と動きを意識することが大切です。

 

これらのポイントを参考に、日々の練習を積み重ねることで、軽快で歯切れの良いスタッカートや、表現豊かなスタッカートの奏法を身に付けることができます。

 

 

上達のコツ

  • 焦らず、ゆっくりと丁寧に練習する
  • 自分のペースで練習を続ける
  • 難しいと感じたら、先生に相談する
  • 音楽を楽しむことを忘れない

これらのコツを意識しながら、練習に取り組むことで、より効果的にスタッカート奏法を習得出来るように頑張りましょう。

 

 

 

 

ピアノ奏法:スタッカートを極めるための各部位の使い方詳細ガイド

 

スタッカートには、いくつかの種類があり、それぞれ異なる身体の動きを使います。

以下に、各部位のスタッカートとして筆者見解を記載してみます。

 

指先スタッカート

指先スタッカートは、軽くて速いパッセージで使います。指の先端を使って素早く鍵盤をタッチします。

指は、弾むように動かし鍵盤からすぐに離す感じです。

明るい音を出したい時、このスタッカートタッチをフレーズ内に使います。モーツァルトの曲は、このタッチで軽やかに弾きます。)

 

手首スタッカート

手首スタッカートは、手首のスナップ動作を利用します。中程度の音量や弾みの良い音が欲しい時に使います。

また、タイトな感じで引き締まった音が欲しい時にも使いますが、手首を軽く上下に動かすエネルギーと速さとタイミングが大切です。

 

肘スタッカート

肘スタッカートは、大きな音量が欲しい時や力強いスタッカートに使うことが多いです。肘の前への動きを利用して腕全体を誘導しながらスピードコントロールをする感じです。

また、横へのメロディーも、肘からの誘導になりますが、この時はスタッカート奏法よりレガート奏法を意識することが多いです。

 

腕スタッカート

腕のスタッカートは、より力強い大きな音量が欲しい時に使います。腕全体の重みを利用して鍵盤をタッチします。

大きなアクセントが欲しい時、または豊かな厚みのある音が欲しい時にも使います。

 

<注意点>

  • 姿勢:背筋を伸ばし、リラックスした姿勢を保つこと
  • 呼吸:息を止めないで、リラックス状態の身体であること
  • 力加減:「スタッカート」となると、力強くとイメージせずに「弾み」と思うこと
  • リズム:スタッカートはリズムを生み出すために使われるものなので、拍感とリズム感は必須であること

 

これらのポイントで、ピアノ学習者のみなさんがスタッカート奏法をマスター出来ますように。

そして、表現豊かな演奏を楽しめることを願っています。

 

ぜひ、頑張って下さい。

 

<余談>

躍進力のある曲は、こんなことに気をつけてレッスンしています。

  • 生き生き躍動感のある音
  • 打鍵・離鍵の速度と手首のスナップ
  • 次へどう行きたいかのイメージ
  • 音の方向性
  • 立体感や躍動感を感じる演奏は、アーティキュレーションの細かいテクニックより、拍感が全てのポイント