みなさんは、スケール練習を頑張ってますか?
今までも、多くの生徒さんから「スケールは嫌いです」という声を聞いてきました。
「スケール練習」は、退屈で機械的な反復作業で、指使いや指の動かし方が難しいそうです。
私も学生の頃、「指の訓練」として捉え、実際にあまり好きではありませんでした。
全調のスケール&アルペジオ、3度6度のスケールなどを練習してから、ようやく曲練習に入ります。
多分、この練習法もモチベーションを下げた理由かな?と思っています。
ただ、無意識の領域で練習してたように思いますが、この「スケールとアルペジオの必殺練習」がもたらす効果が大きいのだと、今振り返ることが出来ます。
スケール練習をすることで、「どのようなメリットがあるのか」、また「親指の役割や扱い方」や「練習ポイント」などを書いていきます。
指の運動だけじゃない!譜読みが爆速になる「調性感」のインストール
「インストールとは」各調が持つ固有の響きや指使いのパターンを、頭ではなく身体で覚えることです。
譜読み(初見演奏)のスピードが上がる!
全ての調でスケールを練習する究極の目的は、単に速く指を動かすことではありません。
スケール練習は、「調性感」や動きのパターンを身体で覚えると、譜読み(初見演奏)のスピードが劇的に向上します。
例えば、シャープが4つ付いたホ長調の曲を弾くとき、いちいち「ファ・ド・ソ・レがシャープだ」と頭で考えなくても、指が自然と正しい鍵盤に導かれるようになります。
この能力が身につくと、新しい曲に取り組む時の苦労を少なくして、より音楽的な表現に集中できるようになります。
音階練習は、短期で終了するトレーニングではなく、あらゆる音楽を自由自在に読み解き、演奏するためのに必須項目なのかも知れません。
スケール練習は全ての要素が含まれてる
楽曲の中でのスケールは、メロディーそのものであり、構造の骨格になります。
そのメロディーとなるものを、美しく弾くためには・・ともっと踏み込んだ勉強は数知れずあります。
スケールとアルペジオ練習:何度も練習することでのメリット
「音楽の大半はスケールとアルペジオがそのまま出てきたり、その応用編だったりする」
と言っても過言ではありません。⬅以前にも書きました「ピアノを上達させる3種類の練習/スケール・アルペジオ・カデンツ」
- 各指のコントロールが出来て、なめらかにムラなく、そして音楽的に演奏できる➡これは、「親指」の使い方にポイントがあります(親指の形:マムシ指の記事はこちらです)
- クラシック音楽はもちろん、ジャズやポップスのジャンルを問わず楽曲演奏に直接結び付く
- 機械的な反復練習ではなく「音楽的に練習すること」で、表情豊かなメロディーへと次の段階に進む➡後で少し深掘りします
- 全調練習をすることで、各調性(♯や♭がいくつ付く)といった調性記号(調号)を学び、指使いのパターンを習得することができる➡指が自然に動くようになると楽曲の中でも♯や♭を見落とすことがなくなる
- カデンツ(和音の終止形)は、その調の和声の流れ(トニックⅠ・サブドミナントⅣ・ドミナントⅤなど)和音構造や和声感が身に付く
- 楽曲中のスケールやアルペジオや和音が出てきたとき、指使いをきちんと覚えておくと最適な指使いがすぐ出来るようになり、譜読み速度が上がります⬅当教室の例を最後に書きます
「音楽的に練習」するために”親指の扱い方”が重要!
「いかになめらかに指をくぐらせるか」が、音楽的か機械的な音の羅列なのかが決まります。
よどみなく流れる音楽的なフレーズにするために”親指の扱い方”をいろんな角度から考えていきます。
デコボコの音階は「親指」が原因だった?流れを制する“指くぐり”の極意
親指の役割や扱い方 他の4本の指とは異なる構造と動きを持っている親指を、次のようなポイントで確認していきましょう。
<気を付けたい項目>
- 腕全体の余計な動き:親指をくぐらせる際に、肘や手首を使って腕全体で「グルン」と回してしまう。これにより、着地した親指の音に不要なアクセントがつき、音の粒が不揃いになります。
- 指の向きの乱れ:腕で回す反動で、鍵盤に対して横になったりまっすぐに戻ったりして、次の音への準備が遅れ、素早いパッセージに対応できません。
- 不適切な打鍵:親指の腹全体で「べったり」と鍵盤を押してしまう。他の指は指先で打鍵しているのに、親指だけ接地面積が広くなるため、音質が硬くなったり重くなったり、スピーディーな動きが妨げられたりします。
<良い動きの例>
- 動きの最小化:肘や手首は極力安定させ、腕を振るのではなく、親指自体を内側に「しまい込む」ようにして滑らかにくぐらせます。全ての指の動きは、内側に意識すること(手の平の空間を包み込む感じ)が大切です。
- 打鍵の位置の統一:親指の腹ではなく、側面(角の部分)で打鍵します。他の4本を指先で弾いているのと近い音質とタッチを得ることができ、音の質(音色)が保たれます。
- 素早い準備:3の指で音を弾く瞬間には、親指はすでにくぐり終えて次のポジションをカバーしている状態を作ります。常に次の音、そのまた次の音へと意識を向けることで、淀みない流れが生まれます。
- 指を動かしすぎない:一本ずつの指を動かす(第三関節から動かすハイフィンガー法)ではなく、肘や腕を横にスライドする感覚です。
- 腕や手首を上下に動かない:横にスライドさせるイメージを、テーブルを拭くとかアイロンがけを想像すると良いでしょう。
- 親指の形:必要以上に各関節(2カ所)を「丸くする」と、マムシ指の原因になり手自体がこわばりますので、らくに放り出した感じが一番自然です。ただし寝てしまわないように、手首を少しだけ上げて親指の入角に傾斜をつけます。
スケールを「音楽的に練習する」とは表情豊かな音楽表現への第一歩
「つまらない基礎練」は卒業!「音階を音楽」として練習する意識改革
スケール練習は、「指を動かす」だけではなく「音楽を表現する」ための基盤になります。
まず弾くことのテクニックが安定していることが大切ですが、基盤の上に「音楽的に練習する」と、次の段階へ進むことができます。
ただただ速く、正確に弾くだけの練習から一歩踏み出し、スケールに様々な表情を与えてみましょう。
練習には無限の可能性があります。
スケールで「音楽表現する」とは
- 表現1:最も自然で美しいフレーズの山を作る 上行形(音が上がっていく)はクレッシェンド(だんだん強く)し、下行形(音が下がっていく)ではデクレッシェンド(だんだん弱く)する。これは最もたくさん現れる、自然な息づかいのようなフレージングです。
- 表現2:聴き手をハッとさせるドラマティックな効果を生む 自然なフレージングとは逆に上行形でデクレッシェンドし、下行形でクレッシェンドする。「ふわっと消えていき、再び迫ってくるような感覚を作れます。
- 表現3:ピアノの広い音域を聴き手に体感してもらう 上行で右手を、下行では左手を意識して響かすと、音域の広がりと空間性を伝えられます。
スケール練習のポイント
1>流れある演奏と、なめらかさ➡親指のコントロールがポイント
- 流れのあるフレーズにするために、音にアクセントがついたり、ムラ(不揃い)にならないこと
- レガートでなめらかに弾くために親指を動かすのではなく、スライドさせる
- 重心がぶれないイメージを持つこと
- 指をスライドさせ、肘や手首が暴れないようにすること(上下左右にバタバタしない)
3>音楽的な表現と音色を揃える
- 特に親指の音質音色に気をつけて音楽のイメージを壊さないように耳で聴いてコントロールする➡親指の脱力
- 親指だけではなく、音楽的な表現が出来るために「どんな風にでも弾ける」状態(速くも遅くも、軽くも力強くも)に各指それぞれがコントロールできる指を作る
- 単純に指の運動ではなく、頭と耳を使った練習が大切です
- ワンフレーズとして綺麗にまとまる練習も効果的です➡スラーのやり方はフィンガーレガートがポイントです
- スケールだけではなく、カデンツでは響きのある和声を目指します➡脱力と重みのかけ方しか方法はありません
- スケールはユニゾンですが、左右のバランス調整も大事です
- 速く動く指を作ったり
- 脱力することで豊かな響きのある音で弾いたり
- 音の強弱ダイナミクスを考えることで、音楽表現に繋がったり
スケール・アルペジオ・カデンツの練習は、全ての音楽的要素を取り入れることができます!
なぜ「スケールを制覇する」ことが大切なのか
ベートーヴェンやショパンの壮大な協奏曲も、その実、美しい旋律の中に無数の音階が隠されています。
スケール練習は、単なる指の訓練ではなく、音楽表現の根幹をなし、楽曲の構造を解き明かす、創造的な探求であるという事実です。ベートーヴェンの劇的な協奏曲、ショパンを彩る華麗なパッセージ、そしてモーツァルトの軽快なメロディ。これら時代を超えて愛される傑作はすべて、スケールという堅固な基礎の上に成り立っているのです。
- 親指のマスター
- 各指のコントロール
- スムーズな運指とレガート
- 調性の理解
- 適切な指使いの習得
- 各調の構成やニュアンスを耳が覚える
- メロディーとしての意識
- 和声(カデンツ和音)のハーモニーが身に付く
- スケールがメロディーとなるなら、左右バランスと音色の調整も工夫出来る
- メトロノームで、遅い~速いを練習すると、どんなものにもどんな時にも対応できるということ
「スケールが弾ける」と言うことは、どんな曲にも対応できる強靱で柔軟な基礎が身に付くことをおわかりいただけましたか?
最も簡単なはずの「ハ長調」が、実は最難関?ショパンが語った意外な真実
ピアノを始めた誰もが最初に学ぶハ長調のスケールです。
シャープもフラットもない、全てが白鍵で構成されているため、最も「簡単」だと思われがちです。
でも、かのフレデリック・ショパンは、このハ長調こそが最も難しいスケールの一つだと断言しました。
一体なぜでしょうか?
その理由は、私たちの手の自然な形状と、平坦な白鍵だけの地形とのミスマッチにあると言います。
5本の指はそれぞれ長さが違いますが、ハ長調のスケールが通る白鍵はすべて同じ高さです。
この平らな形で、長さの違う指を均一にコントロールし、滑らかな音を奏でるのは、実は至難の業なのです、と。
対照的に、変ト長調(ゲスドゥア)のように黒鍵が多く含まれるスケールは、はるかに弾きやすいと感じる人が少なくありません。
なぜなら、長い3本の指が自然に高さのある黒鍵に乗り、短い親指と小指が白鍵に収まることで、手の形が鍵盤の立体的な地形にぴったりとフィットし、より人間工学的なフォームが生まれるからです、とのことです。
ピアノを弾くとは、楽譜の指示通りに指を動かすことだけではありません。
それは、自らの身体の構造と、楽器の物理的な特性との相互作用を深く理解するきっかけになるのです、と。
「記譜上シンプル」が「身体的に容易」を意味するとは限らない。
また「見た目に難しそう」の思い込みも全調を制覇することで体感し、この認識こそが、次へのテクニックへの道を開く鍵となります。
と括られています。
スケール練習の大切さ:まとめ
「スケールそのものがメロディーである」
これを知ると、スケールが実際の曲の中でどのように表現したら良いのか、またどんな響きの音にすれば良いのか、軽やかが似合うのか、それとも力強く、またささやくようなイメージなのか。
「どのような音楽にしたいか」を常日頃から考えるようになるのではないでしょうか。
「曲だからその曲の特徴を考えて練習するよりも、基礎のスケールでそれを習得できていると、楽曲になったときにはもっと深く音楽を表現出来るようになると思っています。
練習のその先は
スケールを全調練習するということは、調性・指使い・和声進行の理解を深め譜読み能力や演奏時の身体のバランス(姿勢や体重移動)にも直結します。
これらの基礎練習は、曲を弾くための土台を築き、最終的には「音を自由にあやつれる」力が備わるものだと信じています。
譜読み速度が上がった当教室の例
<小5女子のお話しです>
年中さんの時から来てくれています。
「ピアノだーいすき♡」と、ニコニコ顔で来てくれた彼女も、もう5年生。
そろそろ反抗期かしら…と思う日が1年ちょっと続いています。
だんだん練習量も少なくなってるのか、レッスンの進みが遅くなってました。
教室は夏休みに発表会をするのですが、それが終わった時点から、どの学年も「スケール練習」を徹底します。
年中・年長組さんは5音で音階とカデンツ、それ以降の学年はアルペジオも練習します。
上手に弾けるかは二の次。全調に触れることが絶対に大事!と思うからです。
この彼女も例外なくこの3ヶ月、儀式のように毎回やっています。
ここ一ヶ月ほど、新しい宿題もサラサラと弾いてくれるのです。
今までは、弾きにくいところになると止まって考え込んだり、自己流の指使いで弾けなくなってました。
それが、スラスラ弾いてくれるのです。
「練習、いっぱいしてるのね」…と、尋ねると
「いや、今までよりしてないかも…」と、答えが返ってきます。
正直、プチショックではありましたが、これで確信出来たわけです。
明らかに、指が自分の意思をこえて勝手に反応してるのです。
「ピアノは考えて弾けるものではありません」
指や身体にしみこむと、練習しなくても「反応力や対応力」が身に付くのです!
もっと練習する子が「素晴らしいスケール練習のエビデンス」を披露してくれるのか・・と期待を裏切りました。
でも、さほど練習しなくても、スケール練習をしていれば「基礎の土台」を築いてくれるのだ!と言うことをお伝えしたくて今回の記事を書いた次第です(笑)
何かのヒントになれば幸いです。


