レガートになめらかに美しく弾いてフレーズを歌う時、すなわち「スラーを美しくなめらかに弾く方法」は、指を動かすのではなく転がします。
らくに、綺麗に、粒が揃います。
以前に、この様なことを書きました。
まず、スラーって何?レガートって何?フレーズって何だ?と思いませんか?
たくさん練習して、どんどん指も動くようになって、止まらず弾けるようになった!
強弱もつけれたし、気持ちいい~!
こんなことに出会うと大満足。
レッスンでも上手に弾けて、今日は合格だー!と嬉しくなっていたのに、先生は
「ここのね、スラーをきっちり見てね。そして、左手も右手ももっとレガートで歌って、
ここまでひといきにフレーズを考えて弾いてね」・・と。
こんな経験、ないですか?
教える側も、指導に熱が入るとこのような言い回しになりがちです。
- 「スラー」これは、習い始めから早い時期に出会うのではないでしょうか。
- 「レガート」これも聞いたことがあるけど、スラーと何が違うの?
- 「フレーズ」何だそれ?どこに書いてあるの?となりませんか?
音楽は、いろんな言葉や記号が音楽用語として用いられます。
では、それぞれにどんな意味や違いがあるか見ていきましょう。
スラーとレガート:音と音をなめらかにつなげる
「スラー」も「レガート」も、共に音の間に切れ目なく、なめらかにつなげて演奏する。とあります。
スラーとは:なめらかに演奏する範囲
レガートとは:なめらかに演奏するという演奏法
スラーは記号で示されますが、レガートは左のように、文字で表します。
レガートとは、奏法=弾き方のことで、なめらかに弾くことそのもの
ということです。
レガートを充分に表現するためには、あとで触れるフレーズの表現との関係も大いにありますので、そちらで書きます。
スラーとレガートの違い
「スラー」と「レガート」いろいろ書きましたが、イマイチ区別がつかない!となってませんか?
「スラーもレガートも」音の間に切れ目を感じさせないでなめらかに演奏する。
名前は違うけど、同じ弾き方ではない決定的な違いは、「区切りがあるかないか」です。
- スラーは、スラー(弧)が付いている範囲をつなげ、スラーとスラーの間の音はつなげて弾かない。
- レガートは、全ての音をつなげて弾く。
フレーズ:考え方と作り方
「フレーズ」とは、音楽・メロディ(旋律)のひとくぎり(楽句)のことをいいます。
みなさんがよく知っているブルグミュラー「やさしい花」の冒頭部分。
細かいスラーや、まとまりよく弾いて下さいのスラーや、小節線をまたぐスラーや、いろいろ出ています。
それぞれ、音の処理を考えたり、方向性を考えたり・・手首や腕や肘を上手くコントロールして演奏することが続きます。
そしてフレーズを考えてみましょう。・・となるわけです。
「フレーズ」は、楽譜に書かれているわけではありません。
「レガートとフレーズ感」がポイントのこの曲は、細かいスラーや、まとまりよく弾いて下さいのスラーや、小節線をまたぐスラーなど、全体をなめらかに表現しながらフレーズを意識することが必要になります。
<例えば>文章を読むとき、単語のどこを強調して、どのように抑揚をつけて、どこで息を吸って区切るのか…などいろいろ考えて読みます。
「フレーズ」とは、これと同じことになります。
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「やさしい花」:フレーズの考え方と作り方
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1小節目、細かいスラーの付く始まりの音レ➡ファ➡ラ➡レは、2小節目のファミドラのファ➡3拍目のラへ。
2小節目から3拍目からの左の音型が、次の3小節目の右のメロディを誘導してます。
左でつながれた音楽の流れを3小節目の右メロデイへとつなぎ、ラ➡ファ➡レ➡ラ➡4小節目ファ➡ラと、音楽が先に先に進められています。
このように、2小節で一つの区切りがあり、4小節が一纏まりのフレーズになっていきます。その先も同じように続き、大きなフレーズとして音楽を捉え、どこを一番お伝えしたいのかを全体の流れ、音型、音の高低、などで読み解いていきます。
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「音楽を作る」とは
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フレーズを見つけ出し、フレーズのまとまりを大きく捉え、音楽を感じてまとまり良く演奏する。
そのためには、抑揚をつけたり技術的な工夫を盛り込みます。
そして、音楽を感じながら歌ってみたり、歌うように弾くことが大切になってきます。
・細かいフレーズを上手く作れると、丁寧な印象になります。
・大きなフレーズを感じられると、心地よく流れの良い演奏になります。
このようにフレーズのまとまりを大きく捉え、まとまりとして演奏するためには、抑揚をつけたり技術的な工夫を盛り込みます。
抑揚をつけたり技術的な工夫とは、スタッカートやアクセントや強弱など、いわゆるアーティキュレーションを工夫し音楽の方向性など、様々な要素が含まれます。
しかし本当は、あらゆるテクニックは「どのように音楽を作るか」を考えた先にあることかも知れません。
では、その「フレーズを見つける」とは、どうすれば良いでしょうか。
フレーズの見つけ方
まず、スラーを探す。
2小節・4小節・8小節・16小節の区切りを見てみる。
これらで、短いフレーズからまとまりのフレーズまで、考えてみる。
小さな文節のフレーズから、文章のような大きなフレーズを感じられるようになるといいです。
そのためには、楽譜に書かれているスラーだけではなく、スラーの付いていないフレーズもあることを知っておくことも大切です。
<フレーズの区切り>は、縦線、小節線にあるわけではありません。
例えば、曲の仕上げで部分練習をするときも、小節ごとに取り出すのではなく、フレーズのまとまりで練習すると良いでしょう。
アーティキュレーションとフレージング
楽譜を理解して実際にピアノで演奏して行くには、いろんなルールや要素があります。
その中の一つがアーティキュレーション。そして、演奏をより豊かなものにするためには、このアーティキュレーションと
フレーズを区切るフレージング作業と密接に関わりがあります。
このアーティキュレーションとフレージングの違いを簡単に書いてみます。
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アーティキュレーションとは
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音楽におけるルールを、どのように演奏すれば良いかを教えてくれるものだと思ってください。
演奏記号としてのアーティキュレーションは、一音ごとに対しての演奏の仕方や表情のつけ方を指定することで、音と音の
つなぎ方に強弱や表情をつけ、バランスを整えたり旋律に意味を与える役割を担っています。
アーティキュレーションには数多くの演奏方法がありますが、楽譜上では明確に指示されているのが特徴です。
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フレージングとは
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楽譜上で意味を持った音符のまとまりをフレーズといいます。
フレーズは、その意味によって様相や抑揚の変化があります。
楽譜上、明確に指定されてないので演奏者の判断や感性に委ねられることになり、この作業をフレージングといいます。
・アーティキュレーション=個体
・フレージング=集合体
このように理解すると、分かりやすいかも知れません。
アーティキュレーション:3つのタイプ
- 長さ変更記号⬅スタッカート・スタッカティッシモ・テヌート・フェルマータなど
- 音符と周囲の音符との音量変化⬅スフォルツァンド・フォルテピアノ・アクセント・マルカートなど
- 音符のグループの演奏法に影響を与える⬅スラー・メゾスタッカートなど
フレーズは「意味を持った音符のひとまとまり」でありたいために、この様に指示されたアーティキュレーションを守って演奏することが必要になってきます。
フレージングと息づかい
- 一つずつの音を個体として、それぞれのつなぎ方がアーティキュレーションです。
- そのつなぎ方を工夫しながらパーツを作っていくのがフレーズです。
そのパーツであるフレーズを組み合わせて、曲の全体を作ることになります。
この時のつなぎ方は、アーティキュレーションという演奏記号で書かれていますので、それに従って演奏すればいいわけですが、フレージングは楽譜に書かれていないために、深い理解がもう少し必要になってきます。
フレーズは「意味を持った音符のひとまとまり」ですが、この「意味」というものが、演奏上の表現になってきます。
<例えば>
- 深い悲しみを感じる旋律やハーモニーは、悲しさの深さまで伝わるように弾かなければいけません。
- 嬉しくて心弾み体まで躍動したくなるフレーズであれば、それが伝わるような弾む音や音色でなければいけません。
そこには演奏者の心情・心模様・息づかい・などの変化が伴います。
となると、必然的にアーティキュレーションも駆使しなければいけないわけです。
このように、意味のあるフレーズを大切に演奏することがとても大切で、そこをおろそかにしては良い演奏・感動できる演奏につながりません。
物語を読み聞かせする時でも、どういう口調でどんな声色で、何を強調して、どのように伝えるかを考えます。
音楽もまさに同じで、淡々と抑揚なく演奏は面白くないわけです。
「フレーズの意味をどう伝えるか」は演奏者の腕の見せどころとなり、オリジナリティに溢れることになるでしょう。
とはいえ、フレージングの難しいところは、どこからどこまでが一つのフレーズで、どのようにまとめていけば良いのか…というところになると思います。
いろんな演奏を聴いたり、経験豊富な方のご意見を伺ったり、ご指導いただいてる先生に教えてもらいながら、自分自身で楽譜から読み取れるように、いろいろ考えチャレンジしていきましょう。
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フレーズの一般的なセオリー
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- フレーズの最初の音は、きっちり提示する(決して大きい音という意味ではありません)
- フレーズの最後は弱めに表現する
- 音が上昇するときはクレッシェンド、下降の時はディミヌエンド
- フレーズの最高音に高まりがくるようにする
- 特に指示がなければフレーズ内は、音の強弱に極端な変化を付けない
- 一つのフレーズ内では、クレッシェンド・デクレッシェンドは一つまでにとどめる
あくまで一般的なセオリーで、曲にもよりますし作曲家によっても違いはありますが、参考になればと思います。
とにかく、今弾いてる曲・・何か物足りないな。。と思ったら「フレーズ」に意識を向けてみましょう。
いつも、フレーズに疑問を持つ目があると、どんどん良い演奏が出来るかもしれません。
フレージングに立ち返って、見直したり考えたりしてみましょう。
是非、頑張ってください。
「レガート」や「フレーズ」「アーティキュレーションのいろいろ」「フレージングと息づかい」など、いろいろ書きましたが、やはり文字でお伝えするのには難しさがありました。
少しでも参考になれば嬉しいです。
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