響きのある美しい音でピアノを弾くためには、演奏テクニックが必要になります。
しかし、「脱力してらくに弾いて美しい音を出す方法」のテクニックを身につける前に、重要なポイントがあります。
身体の使い方や、鍵盤を下ろす(打鍵)やり方などの基本が「美しい音でなめらかに、音楽性豊かに弾くために」大切になってきます。
また最後に、「勘違いしやすい指の動かし方」などもお伝えします。
ピアノを弾く各部位の使い方
指・手・手首・腕・肩・身体の使い方を見直すことが大切です。
以前に、ピアノをらくに弾く方法 ①ピアノを弾く時の座り方で、らくに弾く方法その①としてお伝えしました。
「らく」とは、力ではなく重みを移すことに鍵があります。
骨盤と背骨でらくに支えた上半身から、肩→腕→肘→手首→指と重みを流し、最後に指先から鍵盤に重みを移す。
これが、打鍵の説明になります。
肩→腕→肘→手首→指と重みが流れるためには、それぞれの部位の力を止めないということです。
ほとんどが関節になりますから、関節を硬く固めないということになります。
ピアノをらくに弾くための各部位の使い方
肩
肩は上げないように重力を感じて下に落ちるイメージでらくにすること。
力を抜くイメージがわかりにくければ、一度肩を目一杯上に引き上げゆっくり落としきる。
腕
腕の付け根は、見た目の場所(脇の上)ではなく肩甲骨であること。
らくに動かすとは、肩甲骨からの動きを感じること。
<例えば>ーー
■泳ぐスタイル:クロールを泳ぐ時、腕だけを回すのではなく肩甲骨から手を伸ばすと、前に進み流れに乗り、タイムも速くなります。筆者体験
■ボールの遠投:少しでも遠くに投げようとする時、腕だけを振ったり腕っぷしで頑張るよりも、肩甲骨から腕を振るスピードと身体の重みを乗せるタイミングかなと思います。筆者イメージ
ーー
ピアノを弾く場合も、この肩甲骨から動かす腕の重みやスピードがとても重要なポイントとなります。
細かいコントロールは、腕から先の肘・手首・手・指先の繊細な使い方になります。
肘
この部位の固まりも、かなり重要なポイントです。
<筆者体験談>ーー
学生時代にソナタ曲の重和音(4音~5音)の連続で、ffと粒立ちの良い音を目指した時に、もう一息でエネルギー切れを起こす寸前に、恩師から〔肘をこちょこちょとくすぐられ〕一気に力が抜けてらくに弾けたのを憶えています。
知らずのうちに、たくさんの音を支えるために肘で踏ん張ったのだと思います。
他に、手首を固める方もいらっしゃいますが、自身は手首は解放出来ていたので指先で鍵盤をつかむ感じで弾いていました。ただし手の小さい方は、他のやり方が適切かと思います。筆者は両手とも10度可能
ーー
手首
この部位も力を入れて固めてはいけません。ただ、打鍵の瞬間は止めます。
堅いもの(鍵盤)を柔らかいもので触っても、良い音は出ません。
鍵盤は下に(1㎝)おろせば音が鳴る仕組みになってますので音は出ます。ただ、張りのある響きのある音にはなりません。
<例えば>ーー
■木琴:マレットはなぜ丸いのか。〇の下一点でたたくから響きになります。もし□であれば、面でたたくことになります。
ーー
ただ、マレットもいろんな材質があります。木やゴムや毛糸を巻いたものなど、これが道具の材質です。
道具=腕・手・指 材質=指先となります。指先の使い方は後で記載します。
手
「手をまるく」とよく言います。しかし、丸くするという捉え方で手が固くなる場合があります。
手の甲の丸さに拘るよりも、手の平だと思っています。
<例えば>ーー
レッスン生に伝える話で小さなお子さんから大人の方まで、かなり効果のある例えがあります。
■顔を洗う時の手:水をたっぷり手に取るときの手は丸いはずです。少しでもたくさん溜めようと丸く指の股もきっちり閉じます。そして顔を洗う時の手の平はとても柔らかいはずです。
ーー
これがピアノを弾く丸い手なのです。これは、スラーや美しい音を出すための重要なポイントです。
このイメージを奏者が感じて鍵盤を触る手を、きれいに整えることが必須です。
指
指がピアノ演奏に直接かかわる大切な部位になります。
速く動かすことや、なめらかにつなげるなど、具体的なテクニックが必要になってきます。
今回は大切なコントロールを担う指、それぞれの基本として支えが大切なことをお伝えします。
先ほども述べましたが、打鍵の瞬間は響きのために支える必要があります。それが関節になります。
第三関節と第一関節。
それぞれの関節が出なければいけないとは思いません。
出るという形より、重みを支えられることと、スピードを一瞬受け止められる支えが必要だということです。関節のお話はこちらに書きました。
基本として、ピアノを弾く・美しい音で弾くとは、響きのある音でピアノ本来の美しい音色を奏でることでありたいと思っています。
ただピアノ曲を演奏する上で、響きばかりを追求するのではなく陰影や愁いややるせない心情や…挙げればきりのない音色で作り上げて行きます。
多彩な音色のためのテクニックは、シリーズを進めていく上で初級・中級・上級の習得ポイントとしてお伝えしていきます。
指先
指先のテクニックは、数えきれず無数にあります。
どの様な音にしたいのかで、その学習の深さは変わっていきます。
今回は、上半身から自然に流れてきた重みをどう使うのかをお伝えします。
自然に重みを鍵盤に移すには、指先から水がしたたり落ちるイメージをしてみて下さい。
<例えば>ーー
お子さんには、「柔らかな手の指先からとろ~りはちみつがポトリと落ちてピアノに食べてもらう」と伝えています。
決してギュッと押し付けるでなく、バタバタ触るでなく、音が散らばっていかないイメージをしてみましょう。
ーー
指先から鍵盤に重みをポトリと預けたそのあと、指や手首や腕をどう使うのかで音が止まってしまうか、のびやかに響くのか運命が変わります。
これは長く伸ばす音や短く処理する音(フレーズ最後)、はずむ音(スタッカートや跳躍音)などなど、それぞれに使い方があります。
肩・腕・肘・手首・手・指・指先は無駄な力をつかわない
各部位の使い方をご紹介してきました。
動きやすい手・疲れない弾き方・美しい音を出すためには、無駄な力を抜き、力みのない身体から自然な重みを流すという脱力が、響きのある美しい音でピアノを弾くことに繋がります。
これからシリーズでお伝えしていく細かいテクニックや奏法も、力を使って頑張るのではなく、らくに重みを使って弾くというポイントは全て共通になってきます。
力を抜いてピアノを弾くために、まず大切なこと
「勘違いしやすい指の動かし方」
みなさんも耳にすることはありますでしょうか?
ハイフィンガー:自身の学習時代は、このハイフィンガーいわゆる「ドイツ方式」で、各指の独立運動を徹底的に訓練しました。5指共に強くするために鍛えるという学習でした。
1本ずつしっかりした動きで、粒を揃えて速く弾く。
基本テクニックとしての「ハノン」「スケール」も美しく弾くことより、トレーニングとして練習しました。
ピアノの鍵盤は、ほんの1㎝を下げるか上げるかの世界です。
上がりきった鍵盤より、必要以上に指を引き上げる必要はないわけです。
しかも、まるくした手で指を引き上げる筋肉は不要です。
支えるため、掴むための筋肉は鍛える必要はありますが、指にウエイト(おもり)をつけたりする必要もありません。
1㎝をどう下げるのか…また、どう上げるのかの世界です。
ピアノは、バイオリンのように身体に合わせてサイズが違うわけではなく、小さなお子さんからプロのピアニストまで同じピアノの大きさです。
「小さな子にはやっぱり難しいわね~」ともよく聞きます。
もちろん身体も小さいし、手も小さいからという理由はありますが、ある意味鍵盤の捉え方や、打鍵の速度や重みの使い方など、習得キャリアの違いが大きな違いになってくると思っています。
自然な打鍵の仕方がわかると、いろんな音色も作れるでしょうし、素早く動く手も手に入れることが出来ると思っています。
「勘違いしやすい指の動かし方」
・一生懸命指を動かしてませんか?
・一本ずつしっかりはっきり弾いてませんか?
こうして頑張る演奏は、一音ずつしっかりはっきりした音が出ます。
もちろん曲の中で、このような音が欲しい時もあります。
弾き方には、数知れずいろいろとあります。
ピアノを弾く=指を動かすと思いがちですが、そうではないこともあります。
レガートになめらかに美しく弾く時、すなわち「スラーを美しくなめらかに弾く方法」は、指を動かすのではなく転がします。
らくに、綺麗に、粒が揃います。
これは、シリーズでお伝えしていきます。
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やはり、細かいニュアンスは文字でお伝えするには難しいこともありました。
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